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第1部 三章【護りのミサト!】その5 第七話 守備の達人

作者: 彼方
last update 最終更新日: 2025-12-07 18:30:00

74.

第七話 守備の達人

「親倍だと……!」

「うおお! すごい! ミサトちゃんすごいよ!!」

 ミサトの手が開けられて呉たちは後悔した。しかし時すでに遅し。

「おじさん、ミサトが本当にすごいのはここからよ」

 そう、ミサトは守備の達人だ。50000点に到達したミサトを逆転出来る素人などこの世に存在しない。その可能性は限りなくゼロに近いものだ。

 どんなに足掻いた所で無理なものは無理である。一回戦はミサトの勝利。

「すごい…… 組んでる3人相手にノー放銃で逃げ切った……!」

(まず、1勝)

「呉さん。まずくないか。この娘まったく隙がない」

「えらい集中力やで。ワシらかて下手な麻雀したつもりはない。せやけどあの娘、待てど暮らせど放銃せえへんやんか」

「慌てるな。まだ一回戦が終わっただけだ。落ち着いてやりゃあ俺たちが3対1で負けるゲームがあるわけないだろ」

「それは、そうやが」

「ちょっとお手洗い行っていいかしら」

「まて。おれらは待つのは苦手なんだ。そこのお仲間さんに代走入れて行ってくれ」

「それなら私が」とユキがトイレ代走に入ることになった。

「必ずしもミサトが打たないといけないってわけじゃないんですね」と話しながら二回戦を始める。

「あー、別にいい。3対1で打てるならな!」

「待たされるよりは交代の方がいいわな。麻雀てのはその日一日空けとかなきゃいけないし、具合悪くなりました、別日にやり直しましょうとかなるよりは交代可能の方がおれらも助かりますわ」

「そうなんですね。分かりました…… と、リーチ」

ピンポン『リーチ!』

 リーチ棒を置くと卓が大きな電子音でリーチの声をあげてくれた。入り口といい、卓といい、この店は電子音が最大音量にしてあるみたいだ。しかし、先ほどのミサトのリーチの時は鳴っていなかったが? この卓は旧型だ。もう故障気味なのかもしれない。

「ああ?! リーチだあ?」

「姉ちゃん、話しながらもうテンパイかい!」

「ええ、すんなりと引きました」

 そこにミサトが戻ってくる。

「ごめん、戻るね。あ、リーチかけたのか」

 ミサトはトイレの中にまでリーチ音が聞こえたから慌てて戻ってきたのである。リーチ受けてたら困ってるかも知れないと思って。そうか、かけた側でしたか。と安心した。

「ツモ!」

ユキ手牌

二三三四伍②②③④⑤111 四ツモ ドラ④

「裏は無いけど、テンパネのほうでした。1300.2600」

「ユキ、ありがと」

 こうしてミサト側のチームは二回戦も好調な出だしとなった。

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    88. 第二話 ダニの根性  ユキから引き継いだカオリの手牌は苦しかった。 カオリ手牌 七八八②②②④⑥68東南南 ドラ東 (頑張っても南のみのリャンシャンテンか。だけどここは最低でも満貫ツモが必要……) ツモ八 (七萬を活かしてタンヤオ移行とかしてる場合じゃない。早くリーチまで持っていかないと差し込みが行われて終わる。どうやっても不利なんだ。それなら) 打七 (通れ!)  七萬にロンの声はかからない。死を覚悟した一打でイーシャンテンに漕ぎ着けるがまだ打点は足らない。 「チッ! 気合い入った牌切るやないか」 「ここで一歩でも退いたらもう負けなんですから。当然の選択をしたまでです」  そう言うカオリの手にはあっという間に汗が滲んでいた。それもそのはず。七萬を掴んで捨てる。その作業に何人もの人生が乗っているのだ。それはとてつもないエネルギーを使わないと切れない一打だったはずだ。そこまでして進めた愚形2箇所残りのイーシャンテンにユキは目に涙を溜めながら見守った。  ミサトも神の存在を信じたこともない無神論者であるくせに何かに対して祈っていた。それは麻雀の神であるのか、それともカオリにであるのか。  いや、それは運命に対してだった。自分たちの友情に対して。これまでの青春に対して。自らの人生に対して。 (絶対に乗り越えられる! お願い! 勝って!)と願わずにはいられなかった。こんな所で終われない!  すると次巡…… カオリ手牌 八八八②②②④⑥68東南南 赤5ツモ (うぉ!)  喉から手が出るほど欲しいと思っていた赤ツモ! もう8索に用はない。この牌も危険牌だが。 打8 (通れ!) パシン  何人もの運命を乗せた一打のなんと重いこと。打牌音が響く。強打したつもりはない。ただ、勢いよく振り下ろさないと打ち出せないのだ。緊張で腕の振りをコントロールできないくらいカオリの筋肉は強張っていた。  はあっ!  はあっ! 「おうおう、頑張るやんかー」 「見上げた根性だ。極道に向いてるぜ」 「は、極道? 笑わせないで下さいよ。極める道とか。厨二病なんですか? ただの弱虫チンピラ集団が何を極められるってわけ。あなた達はただの怠け者。何もできない。真剣に仕事をしようともしない。『普通の人』になれなかった落ちこぼれよ! 今だって、正々堂

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